J-DESsERTとは

背景

J-DESsERT実施の背景

1990年代初頭に登場したベアメタルステント(BMS)は、PCIの長期的効果を改善し、現在に至るまで世界のほぼ全ての国で使用されてきました。しかしその後、BMSの普及はステント内再狭窄という新たな問題を引き起こし、薬剤溶出型ステント(DES)の開発・導入へとつながりました。世界初のDESであるCypherシロリムス溶出型ステントは欧州で2002年、米国では2003年に販売が開始され、その1年後には第2のDESであるTAXUSエクスプレス2パクリタキセル溶出型ステントが登場しました。日本では、2004年にCypherステント、2007年にTAXUSエクスプレス2ステントが承認されています。どちらのDESもそれぞれ固有のステントデザイン、ポリマーコーティングおよび薬剤から構成されており、双方ともBMSを対照とした複数の無作為化臨床試験で、ステント内再狭窄を有意に減少させ、BMSとほぼ同等の安全性を示しています。
これらのDESについては、BMSとの比較やDES同士を直接比較する複数の試験が報告されていますが、その規模や解析の様式はさまざまであり、優劣を明確にするという論点に関して十分な結論を与えておりません。こうした論点に直接的に応えるべく、日本にて臨床使用可能なCypherステントとTAXUSステントを比較する多施設共同無作為化臨床試験=Japan-Drug Eluting Stents Evaluation; a Randomized Trial(J-DESsERT)を計画しました。

試験概要

J-DESsERT概要

J-DESsERTは目標症例数を3,500例とし、その約半数を糖尿病群とした大規模な無作為化臨床試験(RCT)です。主要評価項目を手技後8ヵ月後の標的血管不良(TVF)の発現の有無としています。
また、サブ解析として、定量的冠動脈定量法(QCA)600例、血管内超音波法(IVUS)200例、光干渉断層法(OCT)100例、血管内視鏡(Angioscope)100例の特定画像診断サブグループ解析を実施します。

試験実施計画の要約

試験の表題 本邦における経皮的冠動脈インターベンションが適用となる冠動脈疾患患者を対象とした、TAXUSステントとCypherステントの多施設医療機関による前向き無作為化直接比較試験
試験の目的 目視による対照血管径 2.5 mm以上3.75 mm以下、病変長46mm以下と確認された冠動脈に対し、TAXUSステントとCypherステントを使用した際の本邦における手技成功に関する短期的、長期的臨床評価を行う。
適格基準 Ⅰ
選択基準
  1. 20歳以上である患者
  2. 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の適用がある患者
  3. 文書で同意が得られた患者
  4. ACC/AHAのガイドライン(1)に基づき、手技後原則として、少なくとも6ヵ月、出血性の合併症などのリスクが低い場合には12ヵ月間の抗血小板薬(クロピドグレル硫酸塩製剤またはチクロピジン塩酸塩製剤等)の服用が可能であると判断される患者
  5. 一回の手技における病変(50%以上の狭窄)の治療は3ヶ所までとし、標的血管は二枝までの患者
  6. 各病変の目視による対照血管径(RVD)が 2.5 mm以上3.75 mm以下の患者
  7. 各病変の目視による病変長が46mm以下の患者
  8. 薬剤溶出型ステントの適用と考えられる患者
除外基準
  1. 対象血管に、本試験以外に薬剤溶出型ステントによる治療の予定がある患者
  2. 手技前7日以内に急性心筋梗塞(非ST上昇型を含む)を発症した患者
  3. 現在進行中のレジストリや臨床研究に参加している患者および本試験の評価項目に影響をおよぼす可能性のある治療等を受けている患者
  4. 授乳中あるいは妊娠の可能性があり手技前14日以内の妊娠検査が陽性である患者
  5. シロリムス、パクリタキセル、ポリマー、ステンレススチールに対する過敏症が明らかな患者
  6. 抗血小板薬及び抗凝固薬に対する副作用を有する患者
  7. 重篤な肝機能障害を有する患者
  8. 左心室駆出率が35%以下の患者
  9. PCIを必要とする病変が三枝におよぶ症例
  10. 重篤な腎機能障害(血清クレアチニン2mg/dL以上)を有する患者
  11. 人工透析を受けている患者
  12. 手技前5年間において悪性新生物と診断を受けた患者
  13. 手技前1年以内のPCI治療歴がある患者
  14. 慢性完全閉塞(CTO)およびTIMI 2以下の病変
  15. 左主幹部に50%以上の狭窄がある患者
  16. 側枝入口部に50%以上の狭窄を有し、側枝に対しステント留置が必要であると判断される血管。ただし、側枝に対するKBTは可とする。
  17. ベアメタルまたは薬剤溶出型ステントのステント内再狭窄病変
  18. 大伏在静脈グラフト病変
  19. その他、医師が不適切と判断した患者
割付時の本試験における糖尿病群の定義
  1. 「糖尿病」と診断されている患者
  2. 現在抗糖尿病薬(経口血糖降下薬)を服用しているか、もしくはインスリン製剤を注射している患者
  3. 手技前、過去30日以内のHbA1c値が6.5%以上の患者
上記3項目中1項目以上を満たした場合、「糖尿病群」と定義する。
主要評価項目
全症例
手技後8ヵ月の標的血管不良(TVF)の発現の有無
主要評価項目は冠動脈造影検査前に評価すること。
すなわち原則手技後8ヵ月間は冠動脈造影検査を行わないこととする。
TVF: 標的血管血行再建術(TVR)
標的血管に由来するQ波心筋梗塞または非Q波心筋梗塞
標的血管に由来する死亡が含まれる。
TVFの最終判定は、独立した臨床事象判定委員会(CEC)が行う。本試験においては、明らかに標的血管以外の血管に起因すると判定ができない心筋梗塞および死亡例は、TVFとする。
TVR、TLRは、CECが、米国CoreLaboratoryにて解析された定量的冠動脈造影法(QCA)の結果および各医療機関から報告される心電図、血液検査データ等を用い、最終判定を行う。
TVR、TLRの判定基準は下記の通りである。
標的病変がQCAにより、50%以上の径狭窄率を有し、かつ以下のいずれかが生じた場合とする。
  1. 機能検査で陽性(虚血)
  2. 安静時の虚血性ECG変化
  3. 明らかな虚血症状が記録される
またはQCAにより、70%以上の径狭窄率を有し、臨床的または機能的虚血がなくてもTVR、TLRとする。詳細は「用語の定義」の項参照。
副次評価項目
糖尿病群
手技後8ヵ月のTVFの発現の有無
副次評価項目は冠動脈造影検査前に評価すること。
すなわち原則手技後8ヵ月間は冠動脈造影検査を行わないこととする。

組織概要

J-DESsERT運営組織

J-DESsERTは特定非営利活動法人(NPO法人)インターベンションのエビデンスを創る会で実施します。
NPOインターベンションのエビデンスを創る会は、J-DESsERTを通じて、日本の高いインターベンション技術を活かし、世界に発信するエビデンス創りを目指します。